2011年に『マスカレード・ホテル』を刊行したところ、 映像化の話が次々に舞い込みました。 ホテルという華やかな舞台が気に入られたのかもしれません。 しかし私は担当者たちと相談し、余程のことがないかぎり映像化に ゴーサインは出さないでおこうと決めていました。 自分の新たなシリーズにしようと考えていたので、 イメージを固定されたくなかったのです。 それから六年後、今回の企画に「新田浩介=木村拓哉」とあるのを見て、 激しく迷いました。というのは小説の連載中、新田を描く際に漠然と 思い浮かべていたのが、まさに木村さんだったからです。 悩んだ末、何かの縁を感じるので許諾しようと思うと担当者にいうと、 「それでいいと思います」という答えが返ってきました。 映画を拝見し、いろいろな意味で感慨深かったです。 私が頭の中で描いた様々なエピソードが、鈴木監督の手により、 ドラマチックに、そしてスリリングに再現されていました。 さらにキャラクターたちが魅力的でした。長澤まさみさんの山岸尚美は 聡明で気高く、小日向さんの能勢は曲者で不気味。 その他の登場人物たちも怪しさ十分です。 新田浩介はどうだったかって?そんなこと、いうまでもないでしょう。

東野圭吾