PRODUCTION NOTES
日本最大級のスタジオに
ホテルのロビーを建設
シンメトリーが美しい、もうひとつの主役“ホテル・コルテシア東京”
もうひとつの主役である“ホテル・コルテシア東京”をどう描くかで映画『マスカレード・ホテル』は大きく左右される。基礎から装飾まで1ヵ月以上かけて東宝スタジオのステージNO.8にホテルのロビーとバックヤードの一部が作られた。
東野圭吾が「マスカレード・ホテル」の執筆の際、日本橋のロイヤルパークホテルをイメージしていることは有名な話であり(原作小説の文庫の表紙にもロイヤルパークホテルが使われている)、ホテル・コルテシア東京を作るにあたり、美術部はロイヤルパークホテルをまずは研究した。その後、日本各地の一流ホテルも見て回り、そこから映画ならではの伝統あるホテル、“ホテル・コルテシア東京”像を導き出した。ホテル・コルテシア東京の特徴は、エントランス、フロント、階段、エレベーター、大きな要素はすべてシンメトリー(=左右対称)になっていることだ。これは『HERO』などでも見られる鈴木監督の得意とする空間演出だが、シンメトリーにすることで刑事とホテルマンを対称的に描きやすくなるとともに、シンメトリーな建築は一般的に荘厳さが増すと言われており、まさに本物のホテルと見間違うような豪華絢爛なホテルとなっている。実は一般的に一流ホテルといわれるホテルは、正面玄関から入って左右のどちらかがフロントになっていることが多い。しかし、ホテル・コルテシア東京は真正面にフロントがある。入口からフロントまで一直線、左右に広がるエントランス、何とも美しいシンメトリーになっているのだ。またフロントは木村と長澤が長く映し出されるメインセットでもあるため、2人の衣裳(黒のスーツにゴールドに近い黄色のタイとスカーフ)も鑑みて背景の色やデザインが決まっている。中でもエントランスでひときわ存在感を放っているのが、直径約3メートルの2つのシャンデリアだ。撮影のために海外に特注している。正面左手側にある階段の中央には、バラの花でできた仮面のオブジェがあり、そこにも工夫がある。マスカレード=仮面を象徴しているのはもちろん、そのオブジェを本作品中少しずつ作っていく過程を映像に取り込むことで作中の時間経過を表している。
そして、ホテルという舞台を描くうえで監督が一番こだわったのは、ホテルの表も裏も描くことだった。艶やかなホテルのロビーと雑多な雰囲気のバックヤード、両方を描くことで、お客様とホテルマン、ホテルマンと刑事、人間関係の対比がより浮き上がってくるのだ。その為、宿泊部オフィスはフロントのすぐ裏に設置され、バックヤードもロビーを囲むようにステージNo.8いっぱいに張り巡らされた作りになっている。ちなみに少しでもホテルを広く見せられるようバックヤードの壁の一部はステージNo.8の壁をそのまま使用するなど隅々まであっと驚くようなこだわりと工夫がされている。